船橋市議会議員
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令和6年度
第1回定例会
□ 市政執行方針及び議案に対する質疑
1.認知症の人が暮らしやすい地域づくりについて
2.薬物対策「ハームリダクション」の考え方について
● 認知症の人が暮らしやすい地域づくりについて
【質 問|1】
目前に迫る超高齢化社会を見据え、令和元年6月に「認知症施策推進大綱」が国の
「認知症施策推進関係閣僚会議」で取りまとめられました。国はその後の議論を経て、
国や自治体の取り組みを定め、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」、
通称「認知症基本法」が昨年可決・成立いたしました。厚生労働省の研究班によりま
すと、認知症の人は、2020年時点で、600万人以上と推計されております。さらに団塊
の世代が全員、75歳以上の後期高齢者となる来年2025年にはおよそ700万人と高齢
者の5人に1人が認知症になると予測されております。5人に1人というと、高齢者を含
む世帯の3~4世帯に1世帯が認知症と推測できます。周囲に認知症の方がいることが普通の状態となります。
「認知症基本法」では法律の目的について「認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるよう、施策を総合的に推進する」と明記しております。「認知症の方の尊厳や生活を支援する」という内容であります。
船橋市ではこれまで「認知症対策」として、「認知症カフェの開設」、「認知症サポーター養成講座」、認知症の家族を支えるための「家族交流会」の実施、「認知症ケアパス」の発行など、多くの取り組みを行っており、これらの取り組みは大いに評価できるものと思っております。
しかしながら、「認知症基本法」の目的である「認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができる」という部分がこれまでの施策に対してどのように反映させていくのか。さらには新たな取り組みも必要になってくるはずと思っておりますが、残念ながらこれらの点が見えてきません。
加えて、認知症をめぐる偏見や誤解が未だに少なからず払拭されていない現状もあります。
そのため、認知症の方の人権が守られる「生活の保障」が出来るかという視点から、伺いたいと思います。まず初めに、認知症の方の尊厳や生活を支援するために市はどのように今ある施策をバージョンアップさせていくのか。また、新たな取り組みも必要になると思いますが、その点について、どのように考えているのか、お伺いいたします。
【答弁|高齢者福祉部・地域包括ケア推進課】
現在、船橋市ではご紹介をいただいた施策のほか、毎年12月に認知症の方の家族や認知症の研究者にご講演いただいている認知症シンポジウムやふなばし市民まつりのパレードに参加し啓発活動を行っておりますが、議員のご指摘のとおり、認知症をめぐる偏見や誤解が少なからず払拭されておりません。
その中で、まずはご本人の声を聞くことが重要と考えており、新たに千葉県若年性認知症支援コーディネーターにご協力いただき、認知症ご本人同士の出会いの場を提供する「つながるミーティング」を開催いたします。これは、国において令和6年1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の基本理念である、全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意志によって日常生活や社会生活を営むことができるようにすることや認知症の方の家族に対する支援が適切に行われることにより、地域において安心して日常生活を営むことができるようにすることに繋がるものです。
この「つながるミーティング」によって、認知症ご本人同士の出会い、発信の場を今後も定期的に提供する中で声をいただき、既存の施策、新たな施策に反映させていくとともに、認知症基本法の理念を実現していけるよう推進してまいります。
【質 問|2】
認知症施策に関する条例を制定している自治体が増えてきていることはご承知のことと思います。
千葉県内でも浦安市が「認知症の人が、その尊厳が保持され、自らの意思により、力を発揮しながら希望する暮らしを実現し、継続ができること。」「認知症の人、家族等、市民、事業者及び関係機関が認知症を地域の課題として捉え、認知症とともに生きることへの理解を深め、連携することで、認知症の人及びその家族等を含む誰もが、自分らしく社会とつながり、支え合い、安心して暮らせること。」を基本理念とした「認知症とともに生きる基本条例」を制定しております。船橋市でも条例の制定を行うべきではないかと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
【答弁|高齢者福祉部・地域包括ケア推進課】
認知症施策に関する条例を制定している自治体はいくつかございますが、県内では令和4年度に浦安市が、認知症の人が、その尊厳が保持され、自らの意思により、力を発揮しながら希望する暮らしを実現し、継続できることを基本理念とした認知症とともに生きる基本条例を制定しております。
一方、国では、先ほどの答弁にもありましたが、全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活や社会生活を営むことができるようにすることなどを基本理念とした認知症基本法が令和6年1月に施行されました。この理念をもとに、市町村において認知症施策推進計画の策定が努力義務とされており、浦安市の条例と基本理念はおおむね類似しているため、今度、国や県において策定される計画を踏まえ、他の自治体も参考にしながら、認知症施策推進計画の策定に向けて準備を進めてまいります。
【質 問|3】
さて、今回この質問をするため、他の自治体の取り組みについて調べてみました。その中で近年、認知症の早期発見や認知症の予防のために「もの忘れ予防検診」を導入している自治体が増えていることがわかりました。少し紹介をいたしますが、さいたま市では、医療機関で認知症の診断を受けたことがない65歳以上の市民が無料で受けられます。江東区と杉並区は70歳の区民に対し、自分でできる認知症の「気づきチェックリスト」と受診票を送付し、チェックリストの点数が高かった方や点数が低い場合でも認知症に不安がある方は同封の受診票を使って、「もの忘れ健診」が無料で受けられる流れとなっております。また、日野市は70歳から79歳の市民を対象に、調布市は74歳と76歳の市民を対象に、「もの忘れ予防検診事業」を始めております。担当者に伺ったところ、認知症の早期発見・早期対応につながっており、「認知症施策」に欠かせないものとなっているとの回答をいただいています。
これらの他自治体の取り組みをどう評価し、船橋市でも導入する考えがあるかお伺いいたします。
【答弁|高齢者福祉部・地域包括ケア推進課】
「もの忘れ予防検診」は、認知症の早期発見・早期対応により症状の進行を緩めることや、ご本人やその家族の生活に生じる支障を軽減できる可能性を高めることを目的とし、東京都の複数の自治体が、認知症セルフチェックリストを作成し、「もの忘れ予防検診」として実施していることは承知しております。
船橋市において、認知症の早期発見・早期対応を目的とした検診事業は実施しておりませんが、「認知症サポーター養成講座」、「認知症徘徊模擬訓練」、「認知症初期集中支援チーム」などが、その一役を担っていると考えております。また、認知症基本法においても、早期発見、早期診断及び早期対応の推進についても明記されていることから、今後の認知症の施策につきましては、認知症施策推進計画を策定する中で、関係機関や関係各課と調査、研究してまいります。
● 薬物対策「ハームリダクション」の考え方について
【質 問】
薬物と聞くとどのような事を想像されるでしょうか。社会に取り入れられると私たちの生活を向上させるものと、取り扱い次第では脅威となるものの両方を持つものがあります。例えば医療用麻酔や鎮痛薬は人々の役に立つ一方で、麻薬は依存性があり薬物乱用で本人の健康と社会に深刻な悪影響を及ぼすものがあります。そして、大麻や覚醒剤などの「規制 薬物」やそれらとよく似た成分を持つ危険ドラッグ、スマホ時代になって情報収集や受け渡しが容易になったなどの理由で、一般人への広がりが社会問題となっております。
過去から現在まで多くの薬物に関する事件が報道されてきました。こうした事件が起こる度、日本では「違法薬物」は犯罪となり、刑罰も重いから「ダメ。ゼッタイ。」という啓発が行われております。船橋市でも「薬物 乱用 防止」の啓発には決まってこの言葉をポスターに使用し、取り組みを行っております。当然「違法薬物」は犯罪であることから、こうした啓発や厳しい取り締まりは違法薬物の乱用を防ぐために重要であり、過去には「覚醒剤やめますか、人間やめますか」といった極端なキャンペーンが行われた時期があったことも記憶しております。
こうした取り組みにより日本は、世界の中でも「違法薬物」の一次予防が上手くいっている国と言われております。一例ですが大麻を生涯に一度でも使った人の割合が厚生労働省のホームページの「現在の薬物乱用状況」の中に数値が示されており、アメリカは44.2%、フランスは40.9%となっていますが、日本は1.4%であり、諸外国と比較するとかなり低い数値となっております。なかには数値が低いことから、もっと罰則を重くすれば根絶できるのではないかと思われる方もいると思いますが、経験者のうち8.3%の方は依存症になっているとの報告もあります。
加えて、違法薬物ではないが、近年、市販薬や処方薬など「合法」な薬物を大量に服用する「オーバードーズ」を繰り返し行う者が増えているという問題もあります。日本では薬物を使った人への差別と偏見は強く、社会復帰も上手くいかず、孤立と孤独から再度薬物を使用してしまう、それにより依存症になるなど悪循環となっているのではないかと感じております。そのためにも順調な社会復帰、孤立と孤独を解消していく二次予防の面を強化する必要があると思っております。
そうした中、世界の「薬物対策」に目を向けてみると、「ハームリダクション」という考え方が取り入られております。ハームは「被害」リダクションは「減らす」で、薬物被害を少しでも減らすことを目的とする支援方法です。1970年代まではどこの国でも薬物対策は「厳罰主義」が主流でしたが、罰を強化すればするほど薬物問題は水面下化して、健康被害や治安の悪化などの問題が拡大し続けました。1990年代から先進的な国や地域が「ハームリダクション」を施策に取り入れると、薬物によって命を落とす人が減り、感染症の拡大が止まり、治安も良くなるなど目覚ましい成果をあげるようになったそうであります。WHOでも治療とケアの対象として対応するよう提案もしております。実際に薬物をやめられない人の事情に寄り添い、身体、経済、社会的損害や痛みを認め、段階を追って対応していくことが「ハームリダクション」の取り組みとなっております。船橋市は保健所を有していることから、「違法薬物」を始め、ギャンブル、アルコールなど多くの依存症に対する取り組みを行っております。
しかしながら禁止だけの対応では依存問題を根絶することができないことに直視し、救うべき人を救うため、「ハームリダクション」の考え方でこれら依存症に対するケアと支援を行っていくことが必要ではないでしょうか。市のご見解をお伺いします。
【答弁|保健所・保健総務課】
依存に対するハームリダクションという考え方についてのご質問にお答えします。
本市の薬物乱用防止対策につきましては、国の方針に沿い、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動等、様々な啓発活動を実施しているところであり、市が独自にハームリダクションの考え方を主体とした施策を実施することは難しいものと考えております。しかしながら議員のご指摘にございましたが、ハームリダクションの考え方の中でも、薬物をやめられない人の事情に寄り添い、身体、経済、社会的損害や痛みを認め段階を追って対応していくといった考え方は薬物依存などの相談対応をする上で重要なものであると考えており、本市も相談対応については、そうした考え方を取り入れているところです。
薬物施策については、様々なご意見がある事は認識しておりますが、本市としましては、今後も国における関連委員会や検討会の場での議論等を見守りつつ、また、国が示す薬物施策を踏まえ、取り組みを進めてまいります。